サヨナラケイジ
警察の捜査にもかかわらず、誰ひとり発見されていない。

家出したのか、事件なのかもわかっていないそうだ。


「ほら、月曜日からさ・・・・・・」


そう言って悠香が教室の右側最前列にある席を見た。


「え、江梨子? 風邪じゃないの?」


松下江梨子は確かに月曜日から休んでいた。

風邪だと先生は言っていたけれど・・・・・・。


「見たんだってさ」


浩太の声に振り返る。

いつもの悪ふざけもなく、浩太は静かに言った。


「悠香が、昨日江梨子の家の前を通りかかったらさ、パトカーが停まってたんだって」


「え?」


悠香の顔を見ると、彼女は静かにうなずいた。


「江梨子の家の前じゃないよ。すぐ近く。・・・・・・でも、なんだか気になっちゃって。ウワサになるから内緒ね」


そう言って心配そうにため息をついた。


「・・・・・・うん」


江梨子の席をもう一度見た。
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