イジワル上司に焦らされてます
「── 裏の駐車場の25番に停めてある、黒のAlfa Romeoの前で待ってろ」
「え……?」
「もう、終電ないだろ。送ってってやる」
嘘……!!
言われて、慌てて時計を見てみれば、いつの間にか時刻は夜の23時50分を差していた。
嘘……じゃない。確かにもう、終電は行ってしまった後だ。
「俺は、ビル前のコンビニで煙草買ってから駐車場行くから。お前、ちゃんとオフィスの鍵閉めて降りてこいよ」
「そ、そんな、それはさすがに申し訳ないから大丈夫です……! 不破さんは出張帰りで疲れてるのに、私の家を廻ったら不破さん遠回りになっちゃう……」
思わず口から出た言葉に、不破さんはドアに向かっていた足を止めた。
そのまま振り返りざまに、睨まれて。
鋭い視線にドキリと心臓が大きく飛び跳ね、何を言われるのかと身構えれば、今度は酷く真剣な声色で糾弾される。