イジワル上司に焦らされてます
「酔ってるお前をここに置いて行く方が、俺は休まらないってわかんねぇ?」
「……っ!」
「だから、素直に俺に送られてろ。この酔っぱらい」
その言葉に、今度こそ返す言葉を失った。
沸騰したように熱い身体は少しも冷めてくれそうもなく、挙句の果てには不破さんが話すたびに、どんどん温度が上がっていっているような気さえする。
ああ、本当に何がどうなっているんだろう。
確かに、今日の私は不破さんの言うとおりの酔っぱらいだけど、そんな私よりも不破さんの方が酔っているみたいだ。
出張先で、何か変なものでも食べたとか?
それとも疲れ過ぎてて、ちょっと思考回路が可笑しくなっている?
真っ赤な顔のまま、何も言えずに不破さんを見つめていれば、不意に上げられた口角。
その仕草に、再び心臓が警笛を鳴らすように高鳴って、息の仕方も忘れそうになった。
本当に……不破さんは、何を考えているの?
キーケースを持って固まったままの私を見て、イジワルに笑う不破さんの想いが掴めない。