イジワル上司に焦らされてます
「あ、あの。どうして、宇佐美さんと……? 宇佐美さんは営業部だし、今回は設計の方との打ち合わせだったんじゃ……」
「元々、設計の方との打ち合わせが終わったら、時間くださいって言われてて。それで、打ち合わせが終わったあと、宇佐美さんと飯に行ったんだよ。まぁ、そもそも同じ社内だし、時間さえ合えば挨拶だけはさせてもらおうかと思ってたし」
そう言うと、不破さんが優しく目を細める。
約三ヶ月ほど前、私は宇佐美さんからの依頼である、サロン内外で配布するミニパンフレットのデザイン依頼を不破さんを通して任された。
内容は、季節に合わせた肌対策、オススメの化粧品やスキンケア方法の書かれた、ちょっとしたPR誌。
もちろん無料で配布するものではあったけど、その依頼を任された時、私はある提案を宇佐美さんにさせてもらったのだ。
「お前が提案した、ミニパンフと連動企画の " 肌トラブル無料相談 " が狙ってたターゲット層に、かなりウケてるって。無料相談を通して、サロンに通い始める若い客が増えたって、宇佐美さんは言ってたよ」
─── ミニパンフレットの配布と同時に、お肌に関する無料相談みたいなものを、始めたらどうでしょうか。
私がミニパンフレットの依頼を受ける前まで、サロンはどちらかといえば富裕層を狙った企画ばかりを勧めていた。
けれど、新たにパンフレットを配布する意図として、より多くの世代にサロンへの興味を持ってほしいという狙いがあるのだと宇佐美さんは言っていたのだ。