イジワル上司に焦らされてます
 


『この状況で爆睡とか、お前も度胸あるな?』


最早、私に残された道は平謝りすることだけだった。

散々甘えておいて寝るなんて、自分で自分が信じられない。

何より、誰よりも疲れているであろう上司を前に爆睡するなんて……もう、色んな意味で泣きたくなる。


『あ、あの、不破さん……すみませんでした』

『今日は、早く寝ろ。お前も疲れてるんだよ』


だけど、そんな私をそれ以上責めることもせず、不破さんはハザードを焚いて車を降りると酔っぱらいの私を支えて部屋の前まで送り届けてくれた。


『おやすみ』


そして、扉が閉まる前に─── そっと、額に触れるだけのキス。

思わず真っ赤になって両手で額を押さえれば、そんな私を見て「今日のお前は、隙がありすぎ」なんて零すと、不破さんは優しい笑顔を連れて颯爽と帰っていった。

それが、あまりにスマートで、スマートすぎて。


……なんで、あんなに余裕たっぷりなの?


関係が変わったはずだと思ったけれど、私の思い違いかと思ってしまうくらいに不破さんは通常運転だったのだ。

 
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