イジワル上司に焦らされてます
「ふ、不破さん!?」
「……あっ、ぶね」
ガン!と、身体の真横で響いた鈍い音は、閉じかけたエレベーターの扉を、不破さんが片手で止めてくれた音だ。
慌てて我に返ってみれば、私の身体は丁度扉の真ん中で止まっていて、不破さんが止めてくれなかったら朝からサンドイッチの具になっていたところ。
「す、すみません!」
「お前って、俺のこと心配させるのが趣味になったわけ?」
腕で扉を押さえたまま、不破さんが私を見下ろして、そんなことを言う。
「早く乗れ。仕事だ」
そう言って笑う上司は、やっぱり、いつも通り。
だからこそ、空いている方の手で私の背中を優しく押してくれた不破さんに……
「……はい、今週も頑張りましょう」
不覚にもキュンとしてしまったのは、私だけの秘密だ。