イジワル上司に焦らされてます
* * *
「……なぁ、お前が進めてるカフェの名前って、" カフェ・プラス " だよな?」
その雨雲は、突然オフィスの天井を覆った。
あと一時間ほどで、朝、サルさんが言っていた3時休憩を取ろうかという頃。
まるで独り言のような口振りでそんなことを聞く不破さんに、私は作業中だった手を止め、一瞬キョトンとしてから頷いた。
「そうですけど……一応、先週それで進めたいと辰野さんにも話して、ロゴ案も提示してきました」
「……マズイな」
私の言葉に、苦虫を噛み潰したかのように小さく声を零した不破さん。
その様子に、心臓が不穏に高鳴りだす。
「マズイ、って……あの、どういう」
「俺が今朝サーバーに上げた神戸の街中の写真、見てみろ。海沿いにカフェが建ち並んでる通りに、" カフェ・プラス " って店がある」
「え……」
思わず、零れた息。
不破さんに言われるがまま、慌ててサーバーを開いて指定されたフォルダを叩くと、目の前には神戸の街並みが広がった。
逸る気持ちを抑えて、丁寧に画像を一枚一枚確認していく。
すると、その中の一枚に不破さんの言う通り、私が今進めているカフェと同じ名称の " カフェ・プラス" というオシャレなお店を見つけてマウスを動かしていた手を止めた。
「今、見ました。確かに、神戸にも同じ名称のカフェがありますね……。でも、カジタ商事がカフェを作るのは関東ですし、似たような名称のカフェは世の中にもたくさんあるから……」
「お前、忘れたのか?」
「え?」
「カジタは今回のカフェをスタートとして、いずれはチェーン店展開したいと言っていただろう」
「─── っ、」