イジワル上司に焦らされてます
* * *
「ここ、俺のお気に入りなんです。何かあるとここで考えごとしてます」
約束通り、すぐに戻ってきた辰野さんに連れられてきたのは駅前にある流行りのカフェだった。
平日ということもあり子供連れの主婦、辰野さんのような営業マンがPCを開いていたり、カウンター席では学生が勉強をしていたりと様々だ。
その中でも奥まったテーブルに腰を下ろした私たちは、どちらともなく手に取ったメニューに短い時間で目を通す。
「ブレンドでいいですか?」
こういう時、何を頼めばいいのか戸惑っていたところで辰野さんが私に聞いた。
二つ返事で頷けば、タイミング良く隣を通った店員さんに辰野さんが声を掛ける。
「平日なのに、結構賑わってますね」
彼の言う通り、出入りの多い店内。
なんとなく落ち着かなくてソワソワしてしまい、私は辰野さんへと顔を向けることができなかった。