イジワル上司に焦らされてます
 


「……不破さんのことは、誰よりも信じています」



信じてる。あれくらいで、不破さんが私のことを見限るなんて、絶対にしないって。

部下としても……恋人としても、多分大丈夫だろうって、自惚れかもしれないけど信じてるんだ。



「私は不破さんの言葉以上に、不破さんという人間を信じてるんです」



その言葉は、照れ臭くて顔を見ながら言うことはできなかった。

背後で、エレベーターの扉が閉まり、別の階へと呼ばれていく音がする。

それよりも近く不破さんの気配を感じて、私はその場から動くことができずにいた。



「俺も、信じてたよ。俺の可愛い部下は、上司である俺の厳しい叱責にも負けずに、誠心誠意クライアントに頭を下げて、納得の行く結果を持って帰ってくる、って」

「…………っ、」

「よく踏ん張った。ここからまた、挽回しよう」



─── 悔しい。悔しいけど、その言葉を聞いた瞬間、堪え切れずに涙が零れた。

慌ててそれを拭って、隠れるように壁際へと逃げれば、身体が温かい腕に包まれる。



「お前が泣いてんの、はじめて見るわ」

「な……っ、ないてません……っ」



涙声で否定してみても、思う壺だ。

よしよし、と、あやすように髪まで撫でられたら、今度こそ言い訳の仕様がない。

 
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