イジワル上司に焦らされてます
「……蘭、どうした」
……そうか。もしかしたら、これこそがカフェのあるべき姿なのかもしれない。
私が掲げたコンセプト。
" ちょっと一息つきながら、心と身体の癒やされるひとときを提供するカフェ "
それは、その言葉の通り。
訪れた " 人 " が、宝物のような " 時 " を過ごせる場所であること。
私は今まで、どちらかというと売りとなる商品をイメージさせる店名ばかりを考えていた。
けれど本当は、身体に良いものを取り揃えた商品だけでなく、心癒やされる時を過ごせるというカフェ全体をイメージさせるようなものの方が良いのかもしれない。
「不破さん、あの……私、このあとオフィスに行ってもいいですか?」
「オフィス?」
「……はい。今なら、すごく良いものが作れる気がするんです。というか、今すぐ。早く、デザインを考えたいです!」
席を立ち、つい身を乗り出してそう言えば、気持ち良さそうに寝ていたレノンが不満気に私を見上げてテーブルの下から抜け出した。
せっかくの不破さんとの初デート。
本当ならこのまま、夜まで一緒に過ごすべきなのだろう。それが連休だというなら尚更だ。
だけど生憎、今の私にそれだけの余裕はない。
それより何より、今すぐにやるべきことが目の前にある。