イジワル上司に焦らされてます
* * *
「全然、終わらない…………!!」
どっさりと積み上がった資料にプリントアウトされた用紙、片付けを怠ったままの色校。
デスクのPC画面の縁にビッシリと貼られたポストイットが減る気配はない。
辰野さんから無事にネームとロゴ案の了承を貰い、いよいよ本格的に制作に入ってから─── 早3か月。
カフェのオープンまで、あと1ヶ月というところまで来たところで私は大量の仕事に忙殺されていた。
「オープン間近になると、やっぱりアレも必要、コレも必要ってなるのは、あるあるだよね」
「ついでに全部が急ぎってのも、あるあるだなぁ」
「そして、急ぎ過ぎてこまめなデータ保存を怠ってIllustratorが固まり、データが飛ぶのもあるある」
「きゃーー!! イラレが落ちた!!」
一人でバタバタしている私とは裏腹に、デザイナーあるあるを楽しそうに語っている三人に殺意が湧く。
「不破さんが、イラレが固まるとか不穏なこと言うから! その通りになっちゃったじゃないですか!」
「なんだ、自分の不注意を認めずに、上司に八つ当たりか? 随分、偉くなったなぁ」
「八つ当たりもしたくなるよね。だって不破くん、日下部さんに意地悪なことばっかり言うんだもん」
「不破が日下部ちゃんに意地悪なのは今に始まったことじゃないだろう。しかし、このままだと今日も終電コースか?」
「明日も終電コースですよ、こいつ」
「もう! 絶望的なこと言わないでください!!」