イジワル上司に焦らされてます
 


とっくに定時時間の過ぎた夜のオフィス。

それぞれに仕事をこなしながら、軽口を叩き合う余裕があることが私たちの救いだ。

お腹空いたし、目は疲れたし、眠いし、できれば早く帰りたい。

だけどそれをしないのは、私たちが仕事をしている向こう側にも私たちと同じように、自分の仕事と向き合っている人たちがいるから。

どんなに疲れても、私たちの仕事を楽しみに待っていてくれる人たちがいるからだ。



「…………おい。お前、このままだと終電すら乗り遅れるぞ」



ぽつり、と。静寂に包まれた深夜のオフィスでそんな声を掛けられて、私は色校に落としていた視線を上げた。

そうすれば黒いジャケットを羽織り、帰り支度を済ませた不破さんが眉間にシワを寄せながらこちらを見ている。

慌てて時計を見れば、時刻は23時15分を廻っていて、今から急いで荷物をまとめて駅に走っても終電ギリギリという時間だ。



「……お疲れ様です」

「お疲れ様です、じゃないだろ。お前、まさかここに泊まるつもりか」

「その、まさかです。だって、明日の朝までに送校用データ作っておかないと間に合わないし……」

「……チッ、」


 
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