イジワル上司に焦らされてます
 


「すみません、辰野さん……。今更ではありますが、その公私混同、何か別のことに変えていただくことはできませんか?」

「え?」

「申し上げ難いのですが……。実は私、今、お付き合いさせていただいている方がいて。なので、仕事以外のプライベートの場で男性と二人きりで食事をするのは、お受けし難いんです」



良い年をして頭の固い奴だと思われるかもしれない。更には、自意識過剰だと呆れられてしまうかも。

だけど、このまま曖昧な態度を取り続けるのは意に反する。

できれば辰野さんとは仕事相手として、これからも良好な関係を築いていきたいから。

だからこそ尚更、今ここで、ハッキリと一線を引いておくべきだと思った。



「お付き合いさせていただいている方って、不破さんですよね?」

「え……」

「日下部さんだけじゃなく、不破さんも……というか、どちらかというと不破さんの方があからさまで、わかりやすいですから」



どこか楽しそうに、それでいて、からかい口調でそう言った辰野さんを前に返す言葉を失った。

そんな私の様子を肯定と取ったらしい彼は、ニッコリと満足気な笑みを浮かべる。

……一体、いつから気付いていたのだろう。

というか、気付いていながら私にモーションをかけてきていたの?

イタズラに細められた目。

何かを企んでいるようにも見える表情に、思わずゴクリと喉が鳴る。

 
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