イジワル上司に焦らされてます

　


「え……？」



と。不破さんと内輪の話をしていたところで、辰野さんの思いもよらない言葉が聞こえて私たちは一斉に彼の方へと目を向けた。

そうすれば腕を組み、恨めしそうに不破さんを見る辰野さんが目に入り、思わず目を丸くする。



「しかも、" タイガ " に完敗とか。俺、かなり痛い当て馬じゃん」

「辰野さん……？」



突然、よくわからないことを言い出した彼を前に、混乱するしかなかった。

私の聞き間違えでなければ今、辰野さんは不破さんのことを " タイガ " と呼んだ。

え……私の聞き間違い？　それとも、辰野さんはまた何か、考えているのだろうか。



「タイガにだけは、負けたくなかったんだけどな。でもまぁ、初めから勝負にならない勝負だったか」



けれど納得したように頷いて辰野さんが不破さんを見るから、私も慌てて不破さんへと視線を戻した。

そこにいるのは相変わらずいつも通りの様子の不破さんで、私は一人で混乱し続けるほかない。