イジワル上司に焦らされてます
 


 * * *



「美味しい……っ!」



デザートに出された濃厚なチーズケーキを口に運べば、思わず喜びの声が溢れた。

向かいの席で、女らしさに欠けている私を呆れながらも優しく見守る彼も笑っているから、幸せ以外の何物でもない。



「喜んでいただけて結構だ」

「ホテルディナーなら、最初からそう言ってください。不破さんがややこしいこと言うから、変に身構えちゃいました」



言葉の通り、不破さんが予約したホテルというのは横浜にある、タワーホテル内のレストランでのディナーのことだったのだ。

普段は絶対に入れないような敷居の高いレストラン。ガラス張りの窓から下を見下ろせば、横浜の街の夜景を一望できた。

指定された席に腰を下ろした瞬間、次々と運ばれてきた豪華な料理。

それを一つ一つ噛み締めながら、今日はいつもよりフォーマルな格好で仕事に出ていて良かったと心の底から安堵した。

 
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