イジワル上司に焦らされてます
「その、お前の理想って、俺のことじゃん?」
「…………はい?」
「今言ったお前の理想、俺なら全部当て嵌まってると思うけど」
けれど、額へのキスにドキドキしたのも束の間。とんでもないことを言う彼に、思わず目を見開いた。
……呆れた。呆れ過ぎて、何も言い返せなかった。
だって、私の高すぎる理想、ちゃんと聞いてた?
仕事ができて優しくて、私より背が高くて、浮気しなくて。
ギャンブルしなくて基本的に価値観が合って……ある程度ユーモアがあって、普通にカッコ良くて。
それでやっぱり仕事ができて………何より。私の仕事に、理解のある人。
「浮気しないかどうかは、まだわからないじゃないですか」
「7年待った俺に、それを言うか」
「……そもそも、自意識過剰過ぎて呆れます」
「そうか? " 嘘から出た実 " だろ」
「……まぁ、そうとも言いますね」
私だって、決して本気で理想を述べたわけじゃない。ただ、場を乗り切るための冗談みたいなものだった。
それなのにまさか、半分、冗談で言ったことが偶然にも真実になるなんて。
……ううん、偶然なんかじゃないのかもしれない。
7年一緒にいて、ずっと隣で見てきた私の上司。
私が憧れる─── 理想のヒト。