イジワル上司に焦らされてます
─── ああ、今日も。長くて短い1日が終わろうとしている。
「でも、通常業務もこれまで通り、ちゃんとこなせよ。カフェのディレクションで忙しくて~なんて、そんなの他のクライアントからしたら言い訳にもならないからな」
「……はい、気を付けます」
「どうしても廻らないようだったら、早めにヘルプ出せよ。そういう風に、周りに仕事を振ることだって仕事だ」
その駅の灯りを合図に、自然と空いた距離。
改札を抜け、ホームへと降りればいつも通り、不破さんが軽く片手を挙げる。
「じゃあ、お疲れ」
「お疲れ様でした」
たった今の今まで仕事の話をしていたはずなのに、この切り替えの速さは何なのかといつも不思議に思う。
けれど、こんな時は決まって、不破さんに背を向け歩き出した私の頭の中は、オフィスを出た時よりも随分とスッキリしているのだ。
「─── !」
と、不意に。頭の中を過った言葉。
いけない、私……大切なことを、言い忘れてた。