イジワル上司に焦らされてます
思い悩む私の心情とは裏腹に放たれた、思いもよらない言葉に気の抜けた声が出た。
口を開けたまま不破さんを見上げていれば、当の本人はイジワルに口角を上げている。
「お前、今一瞬、期待したろ?」
「な………っ、き、期待なんて……!」
真っ赤な顔で否定すれば、思う壺だ。
そんな私を不破さんは余裕たっぷりに見下ろしているのだから、腹が立つ以外の何物でもない。
「お前のことなら、自分でも嫌になるくらいわかるんだよ」
まるで愛の言葉を囁くような甘い声でそんなことを言った不破さんを前に、思わずゴクリと喉が鳴った。
たった今、私は不破さんの考えていることがわからないと不安になるのだと気が付いたのに。
不破さんは……この状況でも私のことを、わかってくれているらしい。
その事実に、小さく弾んだ私の心。
え………なんで?
なんで私今、ちょっと嬉しいとか思ってるの?
不破さんと私は、ただの上司と部下で。
この7年、それが変わることなんて一度もなくて。
愛の、言葉……?そんなわけ、ない。
不破さんが私のことがよくわかるのは、7年という月日のせいだ。
そもそも私は、不破さんに対してそんな感情を抱いたことは一度もないし。
今だってただビックリしただけだし、ましてや期待なんて、私が不破さんに対して一体何を期待することがあると思ってこの人はこんな馬鹿げたことを───