flower
「外なんだからそんな可愛い声出したら、誰かに聞かれちゃうよ。」
そう呟かれた先生の少し低めの声にも体が痺れてしまうが、誰かに聞こえたらと極力声が出ないよう我慢する。
「…セン…セ………も…ヤァ……」
チュッ
最後に頬に唇の感触があり、先生がスッと離れていき、変わり先生の大きな手が頭に乗せられポンポンと優しく叩かれる。
ボーっとする頭で先生の暖かい手の温もりを感じながら、赤くなっているだろう顔を俯かせる。
「……よし、帰ろっか!」
そう言って先生と繋がれた手は離され、背を向けた先生は駅に向かってそそくさと歩いて行く。先生の耳が赤い気がするのは…きっと私の気の所為だろう。
周りをキョロキョロと見渡し、見える範囲では誰も居なかったことに胸をなで下ろし、先に行ってしまった先生を小走りで追い掛ける。
追い付いた先生の1歩後ろを歩く。会話は無い。なんだか恥ずかしくて話し掛けづらいし、先生からも話し掛けてこない。
駅までの道も、電車の中でも、降りてからも、ずっと私達は無言だった。なんだか気まずい……
「先生、そこの角を曲がればすぐウチなんでここで大丈夫です。送って頂いてありがとうございました。」
先生にお辞儀をして、ダッシュで家に走った。我ながら自己最速タイムくらいのスピードだったと思う。
「あ、ちょっ…待て……」
って先生の声がしたけど、聞こえないことにして振り切って走った。