flower
「今、両親は出掛けてて家に居ないんですけど……私の体調のことなら、もう元気なんで心配ないですよ。」
リビングに案内しながら、先生に話してみるが、先生はまだ何も言わない。
自分の鞄をダイニングテーブルの椅子に移動させ、ソファーに座るよう先生を促す。
「これ読んだ?」
キッチンでお茶の用意をしていると先生の声がしたので、そっちに顔を向けると先生が置き手紙を手にして、こっちに来いとばかりに手招きしている。
「まだ最初のとこしか読んでないです。今ちょっと手が離せないんですけど…あ、先生って紅茶とコーヒーどっちが好きですか?」
先生はちょっと考える素振りをして、コーヒーと答えた。
来客用のカップと自分用のマグカップに1人分ずつ小袋に入っているコーヒーをセットし、後はお湯を注ぐだけ。ケトルに水を入れて後はスイッチを入れてお湯が沸くのを待つだけ…とスイッチを押そうとした所で横からスッと手が伸びてきて、その手がスイッチを押した。
パッと顔だけ振り向くと、やっぱりそこには先生が…逆に他の誰かが居たら驚くけど。
それにしても……近い。
またも心臓がドキドキし始める。
今日だけで私の心臓、一生分の運動しちゃったんじゃないかな。ドキドキしっぱなしだもん。どうかこの音が先生に聞こえませんように!
「日向……」
急に名前を呼ばれたかと思うと、後ろから首に腕がまわりギュッと抱きしめられ、頭には先生の顎が乗る。
「せ…先生?だ、だだ…ダメです。こんな所もし親に見られたら……ご、誤解されちゃう。」
しどろもどろになりながら、首に回った腕を両手で引き剥がそうとしてみるも、先生はびくともしない。