flower
遅刻を覚悟したが、諦めの悪い私の猛スピードの着替え、歯磨き……起きて10分で準備は終わり後は家を出るだけ。
最後に私の部屋のおばあちゃんのネックレスにいってきますのお祈りをして、玄関まで走り靴を履いて急いで家を出る。
「いってきまぁ〜す!」
ママが「ご飯は〜?」って言ってたけどガン無視!ご飯どころではない!ウチのママは天然おっとりマイペース人間。ママに返事をすると話が長くなってしまう。謝るのは帰ってからで良し!ママが起こしに来た時点で凄い時間になってると気付くべきだった。……いやママのせいではないよ。ごめん!
ママへの謝罪を心の中で述べながらも、足は全力疾走で駅へと向かう。あぁ、こんなに走って、明日は筋肉痛かななんて考える。なんとかギリギリの電車に滑り込むことが出来た。
ゼェハァ息切れしながら乗り込んで来た私を通勤通学ラッシュの電車内の人々が注目してなにやらコソコソ話してる。笑いたければ笑えば良い。こっちは無遅刻無欠席がかかってるんだ!…そんなにこだわる程のことでもないけど。
「これどうぞ。」
やや低めの声が聞こえ、後ろを振り向くと目の前には清潔そうなタオルがあり、せっかく顔を洗ってきたのに朝から全力疾走で汗をかいてしまった自分に見ず知らずの優しい人から差し出された物だと理解する。
ハンカチは身だしなみとして持ち歩いてはいるが、まだ梅雨にも入っていない春の気温にタオルは用意していなかった。
「あ、ありがとうございます。」
有り難くタオルを受け取りながら、私より高い位置にある相手の顔を見上げる。