街
プロローグ
私の街には、伝説がある。ナイト、キング、ジョーカー、そして、ばーさーかー、とかいう人がいるのだ。
厳密に言うと、今、この街にいるのは、ナイトとキングだけど。ジョーカーは、何処かに旅に出ていて、ばーさーかーは、本当にいるか、どうかは分からない。
今日は、学校で体育の授業があって疲れた。
もう寝ようかな。そう思っていると、お父さんが部屋に入ってきた。私は寝たふりをする。
お父さんは、私のオデコにキスをして部屋を出ていく。
お父さんがナイトだったら、いいのにな…そう思いながら私は眠りについた。
お父さんが、玄関を出ていくドアの音が今日、私が聞いた最後の音。
「あなた、やりすぎないようにね。あなたが帰ってきたのは、まだ秘密なんだから」
台所で、誰かが呟いた。