あの日から、君は…
皆が教室から去った後、
美由希と二人っきりになった坂町は
少し照れながらも平然を装い
彼女に話しかけた。

「どうしたの?」

すると美由希から予想外な言葉を聞いた。

「あの…わたしをぎゅって
抱きしめてくれないかな…?」

坂町は自分の耳を疑ってしまった。

「……………え?」

「…あ!坂町君がいやなら全然しなくていいからね。」

「あ、いや、オレは全然良いんだけど…
ちょっといきなりだったもんで焦っちゃって。でも何かあったの?」

「…坂町君がうちのこと嫌いになっちゃったんじゃないかなって心配になっちゃって…。」

「…え?どうして?」

「最初の頃は仲良くしてくれてたのに
だんだん時間が経つにつれてあんまり
話しかけてくれなくなっちゃったから…。
私あの時悪いことしちゃったんじゃ
ないかと思って…。」

坂町は前の事を思い出した。

テストの順位を美由希と勝負していた。

負けた方は勝った方の言うことを
一つ聞くというルールだった。

そして勝負に勝ったのは美由希で
ハグしてほしいと言ってきたのだ。

美由希が言うにはそれを期に坂町から
疎遠感を抱いたのだろう。

したくないことを無理矢理させてしまった
せいで自分のことを嫌いになったのでは
ないかと思い悩んでいたのだ。

勿論、坂町は誰とも付き合ってないので
嫌とは一切思っていない。

そして美由希は少し泣きながら、

「でも坂町君にハグされたときの感覚が
未だに忘れられなくて…。
だからもし…私の事嫌いじゃなければ…。」
………………………
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