ラブ アゲイン
傾いたマットレスが浮きあがる。

濱田が立ち上がったのだ。


「ん…渉、ちゃん?」

菜々はいかにも今目覚めた振りをし、流した涙も、目を擦る事で誤魔化しながらゆっくり起き上がった。


「起きた……
ブハッ!なんだよそれ!
パンダ、そう、パンダになってんぞ?ギャハハ」

振り向いた濱田は菜々の顔を見るなり、吹き出した。

えっ?パンダ?

キョトンとした菜々を余所に、濱田はお腹を抱えて大笑いする。

「けっ、化粧が、ギャハハ、目の周り、真っ黒、ギャハハ」

濱田は笑いを堪えながら菜々に伝える。


「っっっ!!!
ヤダァ、見ないで!」

咄嗟に両手で顔を覆い、絶叫した。

「鞄は?私の鞄。どこ?」

「待ってろ、クククッ、すぐ持ってくるから」


しかし、鞄から取り出したポーチには、クレンジングは入っておらず、菜々はプチパニックに陥る。


「コンビニ行ってくるわ」

少し厚手の上着を着た濱田。

菜々に近付き、待ってろ、そい言って2度3度と頭を撫でる濱田の顔に先程とは明らかに違う笑みが浮かんでいた。


「何、買いに行くの?」

パンダの顔で濱田を見上げ訪ねる。

「その顔、どうにかしたいんだろ?
クレンジングだっけ?前と同じメーカーのでいい?」

流石に前のは処分したからって、濱田は片目を瞑りながら部屋を出て行った。


マジ?
本気でクレンジング買いに行くの?
菜々は、濱田の後を追ってベッドから起き上がったが、玄関にたどり着くと、そのドアはガシャンと音を立てて閉まってしまった。



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