ラブ アゲイン
「洗面所…どこ?」

ボソッと呟き、でも、体は確実にその方へ向かう。

案外覚えているものだ。
数年前に通った恋人の暮らす部屋。




洗面所の鏡に写った自分の顔を見て、菜々は大きく一歩後ずさった。

「うっ、酷い顔。ホントにパンダだわ」

今度は鏡に近寄って自分の顔を眺める。


よれたファンデーションに滲んだアイライン。
多分泣いた後、目を擦ったからだろう、下瞼が黒くなっていた。

「パンダだって、ふっ、ウケるんですけど」


まじまじと眺めていると、鏡に映る自分の姿に違和感を覚える。

一歩二歩と下がってよく見る。


「っっっ!!!」

改めて目に入って来たのは、パジャマ姿の菜々だった。

信じられない、確かに昔は付き合っていたけど、でも別れて数年たった元カノを着替えさせるなんて、あり得ない。

頭に血が上り、身体中の血が沸騰する。

「なんなのよ!」

菜々は自分の体をギュッと抱きしめた。


ん?
あれ?このパジャマって女物だ。
えっ?何だか見覚えがあるかも……

菜々はパジャマの前身ごろを引っ張り眺めた。


「……これ、私のだ…」

腕を鼻先に近付け、くんと匂うと、微かに樟脳が香る。




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