ラブ アゲイン
2度程、鼻を擤んで、もう大丈夫だからと、少し濱田から体を離して、驚いた菜々。

濱田が着ていた黒っぽい部屋着、薄明かりの中でも判る位、左腕の辺りが変色している。

菜々のヨレた化粧が服に移ったのだ。

「っ!!!
ごめん、渉ちゃん、服汚しちゃった…」

菜々は申し訳なさそうに謝った。

「あぁ、洗濯すれば落ちるだろ?
それより、その顔、どうにかしたら?」

濱田は服の汚れなど意に介す様子もなく、それを徐ろに脱ぎ、クローゼットから別の服を取り出した。

菜々は、慌てて顔を背ける。

久々の男の肉体を目の当たりにし、激しく動揺した。

見馴れた筈の元カレの身体、今更何焦ってるんだか、菜々は、泣き過ぎて重くなった瞼を両手の指先でそっと押さえた。


そう言えば、社会人になってから、まともに男性と付き合った事が無いと、ふと、思い返す。

2人、いや3人か……
しかし、それらは付き合うといったレベルの付き合いでは無かった気がする。

濱田との一件で男性不信に陥った菜々は、恋愛に臆病になり、極力そっち方面を避け来た。

告白されても断り続け、しかし、ひつこく告られて、仕方無く付き合えば、面白みがないだの、高嶺の花を気取ってるだの、散々コケにされ最終的に振られるのだ。

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