ラブ アゲイン
「菜々?」

濱田の呼びかけにハッと我にかえる。

ん、と差し出されたふたつのクレンジングの片方を受け取り、菜々は洗面所へ足を向ける。


『後で話、あるから…』
寝室を出る時、濱田に言われた。

「話があるんだって」
鏡に映る自分に話しかける。

ホント酷い顔。菜々は徐ろにクレンジングを肌にのせた。熱を帯びた顔に、程よい冷たさが心地良かった。


汚れを落とした菜々は、年齢よりずっと幼く見える。

スッピン見られるのやだなぁ……菜々はタオルで顔をふきながら寝室に戻るのを躊躇う。

幾ら元カレだからと言っても、やはりあの頃とは違う、それに、濱田に対しての自分の気持ちにも気付いてしまった。

醜態を晒しておいて、今更何をと思うかもしれないが、恥ずかしいものは恥ずかしいのである。


「……何時までにらめっこしてんの?」

背後から濱田の声に肩が上がる。

「話がある」
「……う、うん、何?」

ドキドキしながら言葉を返す。

「菜々?」
「っ!なっ、何?」

不意に名前を呼ばれ、伏せていた視線を上げると、鏡越しに濱田と目が合った。菜々は慌てて視線を外す。

「この時間まだまだ寒いから向こうで話そうか」

「………」
急に後ろからグイッと手を引っ張られ、菜々は、濱田に手を引かれて寝室に戻る。

両肩を掴まれそのまま下へ押し、ベッドに腰掛けさせられ、濱田自身は菜々と対面する形でフローリングに胡座をかいて座る。






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