太陽と月
高校を卒業してすぐに、佐和子は実家のある田舎を離れ札幌へ出た。
都会での一人暮らしに夢と希望でいっぱいだったのを今でも覚えている。
しかし就職先の小さな商店はわずか半年足らずで倒産してしまったのである。
田舎へ帰ることも考えたのだが、両親の反対を押し切って札幌へ出て来た手前そう簡単には帰られなくなっていた。
仕方なく佐和子はアルバイトで当面の生活費を稼ぎながらハローワークに通う日々を送っていた。
「さーわこ。元気してる?ねぇ、佐和子も札幌出てるんだよね?久し振りに会わない?彼も紹介したいんだ。」
小学校から高校まで同じクラス(田舎の学校のためほとんどがそうなのだが)だった親友の絵里香から電話があったのは、就職活動が行き詰まっていた頃だった。
絵里香は札幌の大学に進学しており、今後の見通しが全く立たない佐和子とは違い恋人もいるという。
喜ばしいことなのだが、佐和子は親友の誘いに複雑な気持ちでいた。
「いいよ。」
それでも久し振りに絵里香に会えば、何かかわるかもしれないと、その週末に会う約束をした。
実際、その約束が佐和子と絵里香の人生を大きく変えることになる。