太陽と月
「佐和子!こっちこっち!」
絵里香が指定してきた店はすすきのの高級寿司店であった。
絵里香はツイードのジャケットに鮮やかなピンクのワンピースを着ている。
胸元にはセンスのいいネックレスが輝いている。
佐和子はというと高級寿司店に何を着ていけばいいかもわからず、田舎から出て来た時に持ってきたリクルートスーツを着ていた。
「…佐和子、何?その服。」
絵里香は心底驚いたような顔であり、佐和子は帰りたい気持ちで一杯だった。
「初めまして、秋山です。」
佐和子の気持ちを察してか、絵里香の恋人が挨拶をしたことで場の空気は変わっていた。
「あたしの彼よ。実業家なの。」
絵里香は幸せそうに笑うと、秋山の腕に自分の腕を絡めた。
その腕をやんわりとほどきながら、秋山は「好きな物を頼んで。今日は僕がご馳走するよ。」と微笑んだ。
ーー素敵な人。
その時すでに、佐和子は秋山に夢中だった。