あなたの傍に居させて

「待ちや、まだ用意出来てへん。」


その神城社長の返事に少しだけホッとし、出て来るまでに少しは掛かるだろうと、ドアに凭れ掛かる。

このドアの向こうに神城社長がいる。

ドアに寄り添たって神城社長に想いが届くわけでもないのに、ドアに身体を埋める。

この部屋の向こうに唯一存在するその人を想って。



カチャリ、ドアノブが回される音がして、ドアから身体を離した。


「お早かったですね。それでは参りましょう。」


神城社長に道を譲り、社長の後ろを歩く。

茶色の髪がゆらゆらと揺れて、少し猫背な歩き方まで魅了される。

会議室までのその数分、私の鼓動はどんどん早くなっていった。