好きだけど、近づかないでくださいっ!
私がそう聞き返したと同時だった。さっきからずっと繋いだままの手に力が込められ、影が一つに重なる。

掠めるように一瞬、唇が重なった。

「俺は、自分の気持ちに素直になった。鈴とキスがしたいと思ったからした」

確かに人もまばらで、夜景を引き立たせるために照明は仄か。

それでも、こんなところでいきなりキスをされるとは思わなかった。

「勿体無い。好きだから避けるなんて。好きだから近づきたい、触れたい、そう思うようになってそれが出来たら、克服だ」

「・・・触れたいと思えるようになったら」

「そう、だからお前から俺に触れたくなったら、いつでも来い。その時は、両手を広げて受け止めてやる」

「・・・分かり、ました」

「でも、俺は気が短けえからあんまり待たねえからな」

「・・・善処します」

「言ったな?言っとくけど、お前から来たらもう手加減しねえからな。抱かれる覚悟してくんだぞ」
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