好きだけど、近づかないでくださいっ!
私たちは同じ気持ちだったのに、私が間違った恋の仕方をしていたから彼を傷つけた。もう、絶対に傷つけたくない。

「好きなんだ、俺。やっぱりお前のことが。だからさ、俺とちゃんと恋愛してほしい。待ってるから」

そして、家の前で繋がれていた手錠が外された。嫌なら前みたいにつき飛ばせと言われ、シートベルトを外すとギュッと抱きしめられた。

「・・・突き飛ばさねえの?」

「・・・突き飛ばしたいけれど、でも、もっとこうしていたいとも思ってます」

「じゃあ、腕回してみろ、俺の首に」

躊躇いながらも言われたように恐る恐る、ゆっくりと彼の首に腕を回してみた。距離がなくなったかのように密着して、またスキサケが始まろうとする。

「大丈夫だ。お前の気持ちは悪いことじゃない。嬉しいよ。だから安心しろ」

涙が止まらなくなった。康介くんの優しさに。


何度も押し寄せてくるスキサケの波に負けそうになるけれど、彼の鼓動の音が心地よくて離れようとする気持ちより、こうしていたい気持ちのほうが強い。

そして、長い間、車の中で抱き合った私たちは、私が克服するときまで、恋人関係にピリオドを打った。
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