好きだけど、近づかないでくださいっ!
止まらなかった。足がどんどんと前に進んで、彼に近づく。


この距離がもどかしい。そして、私は仲睦まじく話を続ける康介くんの前に行き、足を止めた。

そして、ネクタイを思いっきりぐいっと引っ張って公衆の面前だということも忘れ、ただ、素直に自分の気持ちに従った。

そう、彼がしたようにただ、今康介くんにキスがしたいから、した。

こうして、私はようやくスキサケの呪縛から解放された。




「まさか、職場の朝礼中にキスされるとはな」


「・・・す、すみません。でもいても立ってもいられなくて」


結局、私は課長に第二会議室へと呼び出される羽目になった。もちろん、職場は大混乱。

那月は苦笑し、「きゃー」や「おおっー」の声があちらこちらから聞こえてくる。園田さんがさりげなく肩を落としていたのは、後から聞かされた。
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