好きだけど、近づかないでくださいっ!
「さて、邪魔者は出て行ったな」

その言葉に後ろを振り向くことなんて出来なくて少しずつドアに近づく。このまま靴を履いて飛び出してしまおうか。

でも、私のそんな考えはすっかりお見通しだったみたく、俺様はいつの間にか私の後ろまでやってきていた。


そして、両手をドアに叩きつけ、後ろから包み込むように壁ドン。


「・・・後ろ壁ドン、ですね」

「スキサケよりは流行るかもしれねえぞ」

「そう、かもしれないですね」

どうしよう。一応、会話はできてはいる。俺様だからか。でも、こんな至近距離はさすがに意識してしまう。

よし、会話を変えよう。


「あの、那月と課長は家を行き来するような仲なんですか?」

「お前、本当論点ズレすぎだろ。今、気にすんのはそこかよ?はあ。桐島の彼氏は俺の従兄弟」

「そ、そんなの初耳なんですけど!」

思わず、振り返りそうになったけれど、間一髪。このまま振り返ったら真正面の壁ドンだ。そんなの気絶する。
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