好きだけど、近づかないでくださいっ!
「俺が口止めしてたんだよ。他人のふりをしろって」

それを聞いて、同期さんたちにからかわれたり余計な詮索をさせないための課長なりの配慮かとすぐに分かった。

「桐島はお前にだけは話したいって言ったんだけど悪かったな。お前を信用してなかったわけじゃねえけど、ごめんな」

「いいえ。課長の優しさだって分かったので」

「俺は優しくなんかねえぞ。こうやって嫌がらせする、悪い男だぜ」

そう言って両手をドアから離し、私を後ろから抱きしめてくる俺様。

「・・・最大の嫌がらせだろ?戸松」

名前を呼ばれた瞬間、この人は課長だと脳が認識した。スキサケ発動。

それなのに、この人はそんなことお構いなしだ。また倒れたりしたらどうしたらいいの。

「離してください。あなたはもうスキサケ対象外じゃない。また倒れたら・・・」

「倒れないように、しっかり抱きしめててやる。お前の好きな課長として」

「なんで、どうして今、俺様じゃないんですか?」

「ムカつくからだよ。だから、嫌がらせだよ。嬉しいだろ?お前の対象外の俺様じゃなくて、大好きな課長に抱きしめられて」
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