好きだけど、近づかないでくださいっ!
今まで、うちの部署で課長に言いよる女性はいなかった。八名いる営業事務の女性は既婚者が多いし、那月やシングルマザーの松木さんは、彼氏持ち。

細川さんは、どちらかというと恋愛に興味はなさそう。

だからかこんな風に女性に囲まれる課長を見るのは、新鮮な反面、胸が痛い。

「私もここに転勤したいですぅ」

その中で一番可愛らしい女の子が猫なで声で言うのが耳に入る。

そう、だよね。課長はスペックはかなり、高いし、この部署じゃなければ、確実にモテる存在。

それを目の前で自覚させられた。

苦しい。私はその姿を自分の席で黙って見ていることしかできない。

社内恋愛が禁止されているわけでもないし、隠す必要もないけれどなんとなく、わざわざ公表もしていない。

それに、あの女の子たちより課長の隣にいられるほど私は女子力に長けているわけでもない。

さらには、付き合っているとはいえ、スキサケという厄介な体質でまともに近づくことすら出来なかった。
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