好きだけど、近づかないでくださいっ!
苦しい。もどかしい。聞きたくない。
見たくない。

そう思うのに、意識しないようにしようと思えば思うほど、聞きたくないことは耳に入ってくる。

「・・・あの、椎野課長って、今、お付き合いされている方とかいるんですか?」

「・・・いないな。仕事が忙しくて、それどころではないな。でも、頑張っている女性は魅力的だと思う。だから、これからも大変だと思うけれど頑張ってくれよ」

頭がガツンとかち割られたような気分だった。私は、彼女じゃないの?付き合っている人はいない?

課長の衝撃的な発言があまりにも辛すぎてフラフラと立ち上がり、部署を後にした。チャイムが鳴っても普通通りになんてできるわけない。

あれから、どれくらいの時間が過ぎたのだろう。

結局、部署に戻ることのできなかった私は行くあてもなく、女子トイレの個室に閉じこもることしか思いつかなかった。
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