好きだけど、近づかないでくださいっ!
女の子たちの声が遠くなってゆっくりとドアを開けて出て行ったことを確認した。

「・・・阻止なんて、できるわけないか」

鏡に映る自分は、ナチュラルメイクで髪型も肩にギリギリつくくらいのボブ。アレンジも何もしていないし、本当に童顔。

かたやあの子は少しだけしか見ていないけれど、フワフワパーマで長い髪の毛を上手くアレンジしていた。メイクもバッチリで誰が見ても可愛い。

「みつけた!鈴、何やってるのよ」

自分の姿に意気消沈していると、息を切らして走ってきた那月が女子トイレに入ってきた。

「・・・ご、ごめん。もしかして、探してくれたの?」

「当たり前でしょ、課長から社内メールで鈴がいないから探してくれってメールが来て大慌てで探し回ったわよ。ここにずっといたの?一番に来たけどいなかったわよ」

那月の姿を、見て我慢してきた涙が溢れてきた。本当、情けない。立派な社会人にもかかわらず、仕事をサボって私情で泣くなんて。

でも、それくらい、辛かったんだ。
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