好きだけど、近づかないでくださいっ!
部署には、私と課長の二人っきり。実はもう仕事は目処をついていた。

ただ、課長が懇親会に行くのが嫌で、終わりましたとなかなか言い出せなかった。

「どうだ?目処はついたか?」

課長が立ち上がり、気がつくと私の後ろに立っていた。そして、以前のように肩越しにパソコンの画面を見る。


ああ、もうごまかせない。


「は、はい。すぐ、片付けます」

急いでパソコンの電源を切る。まだ、時刻は七時を回ったところ。今から、懇親会に行っても十分間に合う。

「・・・すごいな、髪型一つで女ってだいぶ変わるんだな」

私が慌てふためいていると、そっと課長は私の右側の席に腰を下ろしていた。そして、そっと結んでいたピンクベージュのシュシュを外した。

パラパラと髪の毛が落ちる。そのシュシュは課長の掌から手首へ。

すっかり気を許して、その一連の動作を見ていたけれど、発作のようにスキサケが始まる。

「・・・これさ、こういう風にも使えるな」

課長はそう言って、距離を取ろうとした私の手を取り、逆の手で自分の手首につけていたシュシュの中に入れた。

そして、逃がさないと言わんばかりにその手をギュッと握られる。

一つの輪の中で二人の手が重なった。
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