針子道中
それがわたしの名前。
私は普通の長屋の長女として産まれた。

五つの時に両親が亡くなり、親戚のつてを辿って江戸に養女に出された私は、両親の顔は今でもよく覚えてるけど、日々を過ごす中でより長い時間一緒にいる養父と養母を慕うようになっていった。

だけど十五になった時、その義理の両親が多額の借金を抱えて、生活難に陥ってしまった。
なので私は二人の負担を少しでも減らそうと奉公にでた。
幸い私は手先が器用だったのでお針子の仕事に就くことが出来たが、仕事先がまさかの吉原。
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