エリート上司と偽りの恋
「歓迎会はどうしたんですか?主任の歓迎会なのに」

「加藤さんが心配だから帰るって部長にちゃんと言ってきたぞ」

「は?そ、そんなこと言ったんですか?みんなの前で?」

「冗談だ。仕事が残ってるから申し訳ないけど帰るって、ちゃんと頭下げたよ」

「なんだ……よかった」

危うく月曜から会社に行けなくなるところだった。


「仕事があるっていうのは、嘘だけどな……」

フッと笑って私を見つめるその視線を、まともに見ることができなかった。


だから、それはどういう意味でしょうか?

聞きたいけど聞けない。

なるべく深入りするのは止めよう。きっと私をからかって楽しんでるだけなんだから。


再び電車が大きく揺れたとき、主任が私の肩に手を回し自分に引き寄せた。


え!?どうしよう……。


なんてことない、落ち着かなきゃって思うのに、私の気持ちに反して胸の鼓動は激しくなるばかりだ。


揺れがおさまっても私を離そうとしない主任。

「もう、大丈夫ですから……」

主任から離れようとしても、その腕は私を離してくれない。

「あ、あの、ちょっと」


「どうせまたふらつくんだから、降りるまでこうしてろ」


「……」

なにも言い返せなかった。


好きになんかなりたくないのに、主任の体に包まれてることが心地よくて……不覚にも、幸せだと感じてしまったから。



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