エリート上司と偽りの恋
「加藤さん、一旦座ってください」
私は主任に言われた通り席に着いた。さっきは緊張して気づかなかったけど、隣には新海君が座っている。
「意外な才能隠し持ってたな」
その新海君が小声で呟いたけど、才能とかそんなんじゃない。別にプレゼンに参加したいとか思ったことは一度もないんだから。
今まで勝手に考えていたものは、センスの欠片もなかったし。
「さて、この中で一番いいと思う案に手を挙げてもらいます」
私がこの中にいることじたい有り得ないのに、万が一私の案が通ってしまったら……。
上を目指したいなんて思ったことない。波風たてるくらいなら、あんなメモ書きしなきゃよかった……。
だけど私のそんな思いも虚しく、私の案が圧倒的な支持を得てしまった。
「うん……主任として大事なキャンペーンの販促品だと考えると、私も加藤さんの案が一番というか、この案しかないと思います」
主任……。なんだろう、選ばれなきゃいいって思ってた自分が、恥ずかしい。
ひとつの販促品を決めるのに、こんなに真剣に会議が開かれていることを、私は知らなかったから。
「でも主任!」
そう言って再び井上さんが立ち上がった。
「加藤さんは営業推進部ではありません。こんな異例を採用してしまったら、今後……」
「井上、どの部署かってことがそんなに重要か?井上さんは会議室に全員分のお茶を配るよう頼まれたら、自分は営業推進部だからという理由で断るのか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「どの部署だろうと、いい物はいい。管理部や事務職の社員だって、今回のようにいい案が出れば採用する可能性はある。これが私のやり方だ。だけどな……」
主任はテーブルに手を置き、前屈みになって全員の顔を見渡した。
「そういう案に負けないくらいいい物を考える。それが営業推進部だと思ってる。今回のことで悔しいと感じたなら、その気持ちを仕事にぶつけてくれ」
立ち上がっていた井上さんがゆっくりと椅子に座り、その目は少し潤んでいるように見えた。
私は主任に言われた通り席に着いた。さっきは緊張して気づかなかったけど、隣には新海君が座っている。
「意外な才能隠し持ってたな」
その新海君が小声で呟いたけど、才能とかそんなんじゃない。別にプレゼンに参加したいとか思ったことは一度もないんだから。
今まで勝手に考えていたものは、センスの欠片もなかったし。
「さて、この中で一番いいと思う案に手を挙げてもらいます」
私がこの中にいることじたい有り得ないのに、万が一私の案が通ってしまったら……。
上を目指したいなんて思ったことない。波風たてるくらいなら、あんなメモ書きしなきゃよかった……。
だけど私のそんな思いも虚しく、私の案が圧倒的な支持を得てしまった。
「うん……主任として大事なキャンペーンの販促品だと考えると、私も加藤さんの案が一番というか、この案しかないと思います」
主任……。なんだろう、選ばれなきゃいいって思ってた自分が、恥ずかしい。
ひとつの販促品を決めるのに、こんなに真剣に会議が開かれていることを、私は知らなかったから。
「でも主任!」
そう言って再び井上さんが立ち上がった。
「加藤さんは営業推進部ではありません。こんな異例を採用してしまったら、今後……」
「井上、どの部署かってことがそんなに重要か?井上さんは会議室に全員分のお茶を配るよう頼まれたら、自分は営業推進部だからという理由で断るのか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「どの部署だろうと、いい物はいい。管理部や事務職の社員だって、今回のようにいい案が出れば採用する可能性はある。これが私のやり方だ。だけどな……」
主任はテーブルに手を置き、前屈みになって全員の顔を見渡した。
「そういう案に負けないくらいいい物を考える。それが営業推進部だと思ってる。今回のことで悔しいと感じたなら、その気持ちを仕事にぶつけてくれ」
立ち上がっていた井上さんがゆっくりと椅子に座り、その目は少し潤んでいるように見えた。