エリート上司と偽りの恋
◇
「そう……まだ信じられなくて」
仕事が終わり1DKの自宅に帰った私は、薄いグリーンのシーツが掛けられているベッドに座り電話をしていた。
『すごいじゃん!できあがったら写メ送ってね』
「うん。でもさ、なんかちょっと複雑っていうか、私の案が通ったことで良く思ってない人もいるだろうなって」
『昔から麻衣は争い事が嫌いだったもんね。平凡普通もいいけど、ときには自分からなにか挑戦することも必要だと思うよ』
私の頭には、篠宮主任の顔が浮かんでいた。
『私は誰よりも麻衣のこと知ってるから言うけど、傷つくことを怖がらないで、自分の思うままに動くと案外いい方向に向かうかもよ』
私の気持ちを全て分かっているかのように、そう言った。
「ねぇ、今幸せ?」
『もちろん。すっごい幸せだよ。たまには会いに来てよね』
「うん。夏休み取ったら行くよ……」
◇