エリート上司と偽りの恋
私には一卵性の双子の姉がいる。名前は結衣。
子供のころは本当にそっくりで、友達や近所の人や親戚まで私たちを間違えることがよくあった。それが面白くてよく入れ替わってイタズラして遊んだり、結衣と双子であることが本当に楽しかった。
だけど、中学高校と年を重ねるにつれて、私たちに違いが出てきた。
見た目も少しずつ変わってきたけど、一番違うのは性格。
結衣は明るくて社交的で目立つのが好きだった、だからいつもクラスの人気者で、それとは真逆なのが私。
『結衣ちゃんかわいいね』
『今度紹介してよ』
『これ、結衣ちゃんに渡しといて』
『双子なのに、あんまり似てないんだね』
そんなことを言われるたびに、私はどんどん卑屈になっていった。だから、結衣から離れた。
東京の会社に就職して、大学卒業と同時にひとり暮らしを始めたけど、決して結衣が嫌いだからじゃない。
昔も今も結衣のことは大好きだし、大切に思ってる。
でも、結衣の側にいると自分が嫌な人間になっていくから、それが堪えられなかった。
私と結衣は同じだけど違う。
私は特別明るいわけでも友達が多いわけでもなく、目立つのは好きじゃない。私は普通なの。
結衣とは違って、私は普通……。
それなのに面食いだなんて、自分でも笑っちゃう。そういう部分でも結衣とは真逆なんだ。
結衣は、大学時代から長く付き合った人と一年前に結婚した。
優しいけど顔は正直普通で金持ちってわけでもない、だけど結衣は今大好きな人と一緒に幸せに暮らしている。
それに比べて私は……。