エリート上司と偽りの恋
「あっ、今こっち見た!ていうかちょー見てるし」
「桐原さん、だんだん声大きくなってるよ」
私が小声で軽く注意しても「見てる、私のこと見てる」と言っている桐原さんには私の声は届かず、同じ席にいる営業事務のお局の鋭い視線さえも全く気にしていないみたいだ。
ふと視線を篠宮さんに向けると、確かにこっちの方を見ている……ような気がしなくもない。
私は思わず視線を逸らす。
まぁとにかく、二十二歳の女子がこんなにも興奮してしまうほどのイケメンが福岡営業所でよかったと心から思うのは、私が福岡県出身だからだ。
もし東京で独り暮らしをしていなかったら、危うく福岡営業所に配属されて危うくイケメン篠宮さんを好きになっていたかもしれない。
そう考えただけで過去の出来事が甦り、ズキッと胸が傷んだ。
逸らした視線を再び前に向けると、篠宮さんの挨拶は続いていた。
「……です。ありがとうございました。第一営業部に移っても今まで以上にがんばります」
……え?第一営業部に移っても?
考え事をしていて聞いてなかった私は、ずっと前だけを見ていた桐原さんに質問を投げ掛けた。
「あのさー、篠宮さん今第一営業部って言った?」
「ダメだ、これ絶対運命ですよ。まさか異動してくるなんて!」
聞き間違いじゃなかった。
篠宮さんが第一営業部に異動……。
で、でも桐原さんがイケメンと言ってるだけでタイプは人それぞれだし、案外そうでもないかもしれないし……。
「桐原さん、だんだん声大きくなってるよ」
私が小声で軽く注意しても「見てる、私のこと見てる」と言っている桐原さんには私の声は届かず、同じ席にいる営業事務のお局の鋭い視線さえも全く気にしていないみたいだ。
ふと視線を篠宮さんに向けると、確かにこっちの方を見ている……ような気がしなくもない。
私は思わず視線を逸らす。
まぁとにかく、二十二歳の女子がこんなにも興奮してしまうほどのイケメンが福岡営業所でよかったと心から思うのは、私が福岡県出身だからだ。
もし東京で独り暮らしをしていなかったら、危うく福岡営業所に配属されて危うくイケメン篠宮さんを好きになっていたかもしれない。
そう考えただけで過去の出来事が甦り、ズキッと胸が傷んだ。
逸らした視線を再び前に向けると、篠宮さんの挨拶は続いていた。
「……です。ありがとうございました。第一営業部に移っても今まで以上にがんばります」
……え?第一営業部に移っても?
考え事をしていて聞いてなかった私は、ずっと前だけを見ていた桐原さんに質問を投げ掛けた。
「あのさー、篠宮さん今第一営業部って言った?」
「ダメだ、これ絶対運命ですよ。まさか異動してくるなんて!」
聞き間違いじゃなかった。
篠宮さんが第一営業部に異動……。
で、でも桐原さんがイケメンと言ってるだけでタイプは人それぞれだし、案外そうでもないかもしれないし……。