エリート上司と偽りの恋
ニューヨークにいたころ、大抵の男は彼女や好きな女性の喜ぶような言葉を素直に口にするのがあたり前で、俺は友人や同僚のそういう姿を何度も見てきた。


彼らは聞いているこっちが恥ずかしくなってしまうほど、愛情をきちんと行動や言動で示していた。


もちろん俺にも何度か彼女はできたが、全て振られて終わり。

冷たいし、本当に愛してくれているのか分からなくなるらしい。

そんなことを言われても、俺には甘い言葉を囁くなんて絶対に不可能だし、冷たいと言われようが俺は王子様でもなんでもないんだ。


上手な恋愛の仕方なんて知らないし、女性を喜ばす術は全く持ち合わせていない。知りたいと思ったこともない。


だけど今、俺は猛烈にそれを知りたいと願っていた。


いつも頑張らなくても告白されて自然に彼女はできていたから、どうにかして彼女に近づきたい。そんなふうに自分から思ったのは、初めてかもしれない。


会社では仕事が忙しいし、なかなか話をする機会はないだろう。

だったらどうすれば……?

そういえばニューヨークでできた友人が『最初が肝心だ』と言っていたな。


考えたところでいい考えが浮かぶはずもなく、俺は友人のオーウェンにメールを送った。なるべく早急に返事がほしいと付け加えて。


【What should I do to approach her?(彼女に近づくにはどうしたらいい?)】




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