エリート上司と偽りの恋
翌日、俺は新規の契約を取るために大手化粧品販売会社に向かった。

先方に商品説明やこれまでの売上データなどをタブレットと資料を使って事細かに説明をすると、長年の営業経験から、話がまとまりそうな感触があった。

営業の新海君にその場を少し任せ一旦席を外した俺は、会社に電話をかける。


『シライビューティー株式会社東京営業所加藤です』


お、おい……こんなときはどうするのか、オーウェンは教えてくれなかったぞ!

心の中では動揺しつつ、とりあえず彼女に用件を伝える。


送られてきた資料をもとに再び先方と話をすると、時間は掛かったがなんとか話はまとまった。


取引先を出たとき、オーウェンからのアドバイスのひとつを思い出した俺は、すぐさま彼女の会社用パソコンにお礼のメールを送信した。


【彼女になにかしてもらったときは、お礼の言葉を必ず伝えること。それがどんな些細なことでも必ずだ!】


これで少しは近づけたんだろうか。全く分からない……。


帰り際、部長に新規契約の報告をとりあえず手短に伝えた。

『ご苦労様、詳しい話は帰ってから聞こう。ところで、今日君の歓迎会をやろうと思うんだが……』


歓迎会……?営業部全員で?


焦った俺は営業の他のメンバーに先に戻るよう告げ、急いでオーウェンに電話をかけた。恐らく寝てる時間だが、これは緊急事態だ。


四度目の電話でようやく出てくれたオーウェンにまずは起こしてしまったことを謝り、その後歓迎会という飲みの席ではどうしたらいいのか助言を求めた俺。


オーウェンは眠そうな声だったが焦りが伝わったのか、的確なアドバイスをくれた。

話を聞きながら必死にメモを取った。……が、これを俺がやるのか?

考えただけで顔が熱くなっていくのが分かった。




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