エリート上司と偽りの恋
「麻衣?」

「はい」

「時間だ」

「え?」


丘の上にある時計に目を向けると、二十四時間を一分すぎていた。


「はいこれ、開けてみて」

小さな箱を渡された私は、戸惑いながらも言われた通りゆっくりと箱を開ける。


「これ……」


やっと涙が止まったと思ったのに、こんなの……泣くに決まってるよ……。


主任の手が、私の頭を優しく撫でた。


「本当は週明けに送られてくる予定だったんだけど、ひとつだけ昨日取りに行ったんだ」


箱の中には、私がデザインし販売促進の品として採用された、あのチークが入っていた。

透明のボトルからは、鮮やかなピンク色が見えている。


「誕生日おめでとう。これしか用意できなくてごめん」


大きく首を振り、私は主任に抱きついた。


「うれしい……本当に……人生最高の誕生日です」


そう言って主任を見上げると、最高にかっこいい笑顔を向けて、私に囁いた。



「……大好きだよ、麻衣」









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