エリート上司と偽りの恋
仕事中や仕事モードのときの晴輝は、あくまでも私にとって彼氏ではなく主任。
今もイベントを終えたばかりだからか、仕事モードが続いているのは顔を見れば分かる。

いつもは必ず繋ぐ手も繋がず、駅に入って行った。


微妙に混んでいる電車の中で入ってすぐドアの横に立ち、そんな私の方を向いて晴輝が立っている。

スマホで時間を確認すると、十九時少し過ぎたところだった。窓の外はもうすっかり暗くなっている。

四月になれば、もう少し日が長くなるんだっけ?そんなことを思いながら晴輝の顔を見ると、なんだか難しい顔をして外を見ている。


仕事のことでなにか考えてるのかな?

あ、今眉間にシワ寄ったし。

ジッと晴輝の顔を観察していると、急にその視線が私に移った。


「あのさ、麻衣……」

「ん?なに?」

「あのさ……」

「どうしたの?」

なかなか話し出さない晴輝の様子がちょっと変なことに気づき首を傾げると、さっきまで離れていた晴輝の手が私の手をそっと握った。


「仕事でなにか……」

あったの?そう聞こうと思ったとき、晴輝の顔が私の耳元に近づいた。



「結婚……しよう」



ーー……えっ!?


「は、晴輝?」

「結婚しよう」


二度言われた言葉は、きっと聞き間違いなんかじゃない。

だけど……。


「それってプロポーズ?」

「ああ、そうだけど」


私は晴輝の顔を見上げ、思わずプッと吹き出した。

周りの状況とか全然気にしないところ、晴輝らしい。




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