演劇の王子
第一幕
美青年
『目覚めておくれ……美しい人』
王子様の手が愛おしそうに、姫の頬に触れた。
あなたさえいればなにもいらない―――と懇願するように、綺麗な焦げ茶色の瞳は姫へと注がれる。
形のいい唇が重なった時、会場からはため息がこぼれた。
まるで本当に王子様やお姫様のいる世界に飛び込んだようだった。
「ねえ、お父さん」
「なんだ?」
「王子様役の人って何歳?」
「17歳。お前より2つ上だ」
「そっか………」
鳴り止まない拍手の中、お父さんは感心とばかりにスタンディングオベーションに加わった。
「素晴らしい。本当に天才だな。あの男の子は」
初めて彼を見たのは15歳。
まだ恋心なんて抱いたことはなかった。
こんなにも体が熱く燃え上がるような気持ちは初めてで、
この人と同じ学校に行きたい!
この人の演技をもっと見たい!
高鳴る気持ちを抑えることなんてできなかった。